カクテル紅茶館の事件簿録
いち.サッカーボールと少年

いつもよりほんの少し帰りの時間がずれてしまった。

それでもいまの時期は日が落ちていくのが早いせいで、頭上に広がる空の色は茜色と呼ぶには鮮やかさの足りない色だ。

紫に近い青に、差し色的に残っている赤みを帯びたオレンジ。

それはそれで幻想的にも見えるし、見方によったら不気味だと感じる人もいるかもしれない。

信号の待ち時間にそんなことを考えていると不意に冷たい風が露出している肌を撫でた。

いまは夏の終わりと秋の始まりの境目の季節。

すっかり暑さに慣れてしまった身にはこの気温でも思わず身を竦めてしまいそうになる。
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