俺の彼女が一番可愛い!
ただ、好きなんだよな
* * * * *

「咲州!」
「…?」

 大学で声を掛けられることがよくあるようになって数か月。2月の夕方は息が凍るほどに寒い。

「今日は俺、夜バイトがあって…。」
「違う!昨日!」
「昨日?」

 こんな片言で話す人ではなかったはずだと思いながら、言葉の続きを促す。

「昨日から付き合うことになった!」
「えー!」

 あれからというもの、定期的に料理を教えたり、綾乃と一緒に飲んだりしながら、なんとも言えない距離感をもち続けてきた。そして昨日はバレンタインデー。つまりは本命がもらえた、ということなのだろう。

「ど、どうしてそんな展開に…?」
「…いやまさか、俺だって本命貰えるとは…。」
「そういうことか!でもよかったね。気持ちを伝えられて。」
「…まぁ、でも…決してかっこいいと思えるものではなかったけど…。」
「はは。そんなもんだよ。スタートは決まらなくても、これからが大事だよ。一緒に歩いて行くことがさ。」
「…うわ、大人。」
「…そう、かな?」

 普段はそんなことを言われないから、少しだけ照れてしまう。だが、嬉しいことには変わりない。

「今日バイト先行くわ。話聞いて。」
「うん。あーでもラスト付近の方がいいかも。遅くても大丈夫?」
「ああ。遅めに行く。」
「うん!話聞くの楽しみ。」

 嬉しい話を聞くのは楽しみだ。どれだけ凛玖が、彼女を想っていたか知っているからこそ余計に。
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