7・2 の憂鬱
「戸倉さんは気にしなくても、わたしは気になるんです!」
はじめての反論だった。
わたしの頭を撫でていた戸倉さんの手が、ビクリ、と止まる。
まるで八つ当たりのような言い方になってしまった自覚はあった。
こんなことを言いたいんじゃないのに。
でも、わたしと一緒にいたら戸倉さんに迷惑がかかってしまうから・・・
だったらそう説明すればいいのに、動揺が動揺を呼んで、うまく、言葉を紡げなかった。
戸倉さんの驚いた瞳がわたしを捉えていて、それが、少し揺れる。
「白河・・・・」
珍しく、戸倉さんに戸惑いが見えた。
こんな戸倉さんの声は聞いたことがなかったけど、今のわたしには、申し訳ないと思える余裕もなかったのだ。
「わたし・・・・、失礼します」
そう言って、逃げるように会議室から飛び出したわたしを、
戸倉さんは、もう追ってはこなかった。
入社してからずっとお世話になっていた人なのに。
他人と打ち解けないわたしのことを気にかけて、
優しく接してくれた人なのに―――――――――
最後にわたしの名前を呟いた戸倉さんの声が、
いつまでも耳に残っていた・・・・・・・