7・2 の憂鬱





扉が閉まったとたん、激しく抱きしめられた。

互いのバッグが足元に落ちるのも気にしないで、わたしは戸倉さんの胸に手を当てた。

彼の匂いにむせかえりそうで、ぎゅっと閉じ込められた腕の中は、信じられないほどに甘く感じた。

ああ、本当にわたしはこの人が大好きなんだ・・・・そして、戸倉さんも・・・

胸にあふれる想いに泣きそうになったのと、
唇に熱を感じたのは、ほとんど同時だった。


「んっ・・・」

前ぶれなく落とされたキスは、甘いだけではなく、息苦しさも与えてくる。

遠慮なく差し込まれた戸倉さんの熱さに、わたしは必死で応えようと彼の動きを真似た。

「・・・はっ、・・ん・・」

ぎこちないわたしの反応だったけど、戸倉さんには気に入ってもらえたのか、彼の動きはさらに激しさを増していく。

角度を変えて、息継ぎも忘れて、目を閉じたまま、彼の熱を追った。

それなりに経験はしているはずなのに、わたしは、こんなにキスが気持ちいいものだと、はじめて知ったかもしれない。

相手が、戸倉さんだから・・・・


彼と触れているところは、どこもかしこも気持ちいいのだ。

深いキスが続く唇も、背中をあやしく這う手のひらも、首筋や頬を移動しながら撫でるもう片方の手も、すべてが愛しくて仕方ない。

やがて戸倉さんの手はわたしの体をおりていった。

そしてカットソーの裾に潜り込んできたとき――――――


「んんっ!」

わたしは、唇をふさがれたまま、抗議の声をあげた。
こんな、玄関でなんて・・・・

戸倉さんは閉じていた目を開くと、キスをやめてくれた。









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