極上な王子は新妻を一途な愛で独占する
5
手紙を出した達成感に気分を良くしていると、慌ただしい足音が聞こえ、その少し後に扉が遠慮なく開けられた。

「シェール! 何をやっているの?」

深窓の令嬢とは思えない大声を上げて、マグダレーナが近付いて来る。

その剣幕に、つい大袈裟なくらい肩を震わせてしまった。

(まさか、早くも手紙の事がばれた?)

人は後ろめたい事が有ると臆病になるようだ。
普段なら適当に流せるマグダレーナの睨み付けが怖く感じる。

ビクビクとするシェールを、マグダレーナは不審そうに眺めて言う。

「私の部屋に来るように言ったのにどうして来ないの?」

「あっ、それですか」

そう言えば、手紙を頼んだ時に家令が言っていた。

すっかり忘れていたのだけれど。

「それですか? じゃないわよ。お前ちょっと気を抜きすぎではない?」

「すみません。それで何か御用だったんですか?」

「前から思っていたけど、シェールの謝罪って心に全然響かない……まあ、いいわ。聞きたい事が有ったのよ」

「どのような事ですか?」

「アルフレート殿下はいつお戻りなの? 私が来てから一度も姿を見ないけど、いくらなんでもおかしいのではない?」

「……その事ですか」

ついに指摘されたと、シェールは小さな溜息を吐いた。

全く姿を見せない王弟の事を、いつかマグダレーナが不審がるとは予想していたのだ。

(それにして思いつくのが、私が行動を起こした日って……)


育ちも性格も全く違うふたりだけれど、気持ちの切り替えをする感覚は似ているのだろうか。


そんな事を考えながらら、シェールは以前から考えていた答えを口にした。

「アルフレート殿下は戻りません。マグダレーナ様が会うことは無いと思います」
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