独占欲強めの王太子殿下に、手懐けられました わたし、偽花嫁だったはずですが!
揺れる想い近づけてはいけない心
 アーベルとフィリーネの謀は、うまくいっているようで、そろそろ、クラインの店に卸したレースの在庫が尽きるらしい。新しく仕立てるだけではなく、既存のドレスを直したいという依頼も殺到しているそうで、クラインも大忙しだそうだ。

 そんな事態に対応すべく、フィリーネはヘンリッカと一緒に図書室で作戦会議を開いていた。今、フィリーネの肩にはレースのショールがかけられている。

「お父様に連絡して、もう少し送ってもらわないといけないわね。売り時を逃すわけにはいかないもの」
「パウルスを連れて行って、クラインさんの店の人と引き合わせてもらいましょう。そうすれば、あとは私達抜きで、直接取引してもらえるし」

 フィリーネのショールは、使っている糸こそ商品にはできない品質のものだが、細工そのものは繊細だ。とはいえ、職人ではなくフィリーネが自分で作った物なので、手作り感がにじんでいるのはしかたない。

 三角形の底辺部分は、森の乙女ドリーのレースだ。葉の模様を編んだレースに、今度は雪の乙女シェルのレースをつなげてある。そして、三角形の辺に、ぐるりとイリスのレースが縫い付けてあった。

 これだけの品を作り上げるのには時間もかかったし、売り物のレースには使えないけれど、自分で使う分には問題のない糸を欲しがる人は多いので、糸を集めるのも大変なのだ。
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