菓子先輩のおいしいレシピ
一皿目 気まぐれ猫とあったかスープ
 どうしてこんなことになったのだろう。

 薄暗い非常階段、右手にはお弁当箱、左手には謎の先輩の手。
 お人形さんのような顔をした先輩は、期待のこもったきらきらした瞳で私を見つめている。
 空気の読めない春風が、制服のスカートを揺らしながら私たちの間を通り抜けて行く。


 どうしてこんなことになったのだろう?
 そもそも私の人生、後悔ばかりだった。

 人見知りなのに気が強くてプライドが高いから、友達がうまく作れなくてクラス替えの日はいつも憂鬱だった。
 人に優しくされても上手にお礼が言えない。両親には小さいころから「こむぎは素直じゃないね」と言われてきた。

 私の人生あまのじゃく。まるで演歌のタイトルみたい。泣ける曲が書けそう。

 誰かに誘われたら部活に入ろうと思っていたけれど、最後まで誰にも誘われなかったので中学三年間ずっと帰宅部だった。仲の良い友達もいなかったから暇で、休みの日も勉強していたから成績だけは良かった。

 無事に県で一番偏差値の高い女子高に入学できた。女子高だったら同性ばかりだし、友達もできやすいのではという期待もあった。校風も穏やかだし、進学校だったら私みたいな人間でもいじめられることはなさそう。

 高校生になったら、ちゃんと友達を作ろう。勇気を出して部活にも入ってみよう。人並みに人付き合いのできる、新しい私になるんだ。

 ――そう、思っていたのだけれど。
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