きっと夢で終わらない
手前の壁に向かった生徒机で、ノートパソコンに向かっている弘海先輩がまず目に入った。
この場合は挨拶するのが礼儀だという瞬時の判断で、軽く会釈したものの、私に気づいた弘海先輩は驚く様子もなく、ただ私を一瞥して、軽く頭を下げて、また画面に向かった。

予想は確信に変わった。
この人は本当に徹底的に私との接点を無くそうとしている。

これでもう何人も邪魔するものはいない。
そう喜ぶべきはずなのに、何故だか胸の奥がキュッと苦しくなった。


「八城さん来たのね?」


向かい合わせの右側のオフィスデスクから、キャスター椅子に身体を預けて私を確認した花純先生は、「こちらに、いらっしゃい」と迎えてくれた。


「失礼します」

「こっちに座って」

「はい……」


花純先生がデスクの前に開いて置いてくれたパイプ椅子に腰を下ろす。
背後の気配にピンと背筋を伸ばし、鼓動が落ち着いてくれるよう深く息を吸った。
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