御曹司は恋の音色にとらわれる
お誘い
演奏時間になると、店のライトが絞られ、
ステージに赤、青などの光が混ざりあい、
白い光となってステージに降りそそぐ。

それまで、がやがやしていた店内は、
幾分静かになるが、コンサートホールではないので、
ひそひそとした声は残る。

私が先頭に立ち、ステージに入る、
中條さんがピアノの前に来たのを確認して、
2人で頭を下げる。

顔を上げた時、噂されていた”彼”を見つけた、
今日も一番前のテーブルで、私の方をじっと見ている、
恋だの盛り上がっていたので、気にならない訳ではないが、
ソリストなら、注目が集まるのは当然なので、
他のお客様も見渡し、演奏準備に入る。

少し場が落ちついた頃、中條さんと目配せする。

ベートーヴェン:ロマンス第2番 ヘ長調 作品50

ゆったりと穏やかに流れる旋律。
空気が優しい雰囲気に包まれる。
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