全てを失っても手に入れたい女が居る
第一章 想い
二年前。

日本支社の事が本社で問題になっていた。
俺のボスであるボブは、Coldmanと呼ばれる程、仕事に情は一切持ち込まない男。
だからRepresentativeDirectorの椅子迄登ってこれたのだろうけど。そのボブに呼ばれた。

『コージ イッテクレルカイ?』

買収して10年ほどはまずまずの業績だったが、このまま利益が出ないなら切り捨てるべきだという声が上がっている。

ボブも痺れを切らしたか…?

『それは切り捨てろと言うことかい?』

『ソレワ コージニ マカセルヨ?』

俺に任せる。か…
さぁどうするかな…?

まずは様子を見に行ってみるか…


それから俺は直ぐに日本へ発った。


空港に迎えに来ていた友人でもある、日本支社の管理部部長をしてる菱野耀一の車に乗り、そのまま社へ向かう事にした。

「日本に帰って来たのは何年ぶりだ?」

「さぁ?忘れた…」

「まだ彼女の事が忘れられないのか?」

「………」

「いい加減忘れろよ?
お前を捨てた女の事なんか?
まぁ美人といや〜美人だったけどな?
ホント立ってるだけで、絵になる女だったしな?
もし、まだ彼女に未練があるなら、力になるけど?」

ひとが忘れていた古傷に、平気で塩を塗るこの男は、俺が日本にいた頃の同期で、気心が知れた数少ない信頼のおける友だ。勿論、頭もキレる。
今回は力を借りたくて、前もってこの耀一にだけは内密に連絡をとっていた。

「で、本社はなんと言ってる?」

「俺に任せるとさ!
どちらにしても猶予は2年ってとこだな?」

「じゃ、大丈夫だな?」

「さぁどうかな?
取り敢えず、見てから考えるよ?」

数字だけ見ていては分からない事も、中から見れば何か見つかるかもしれない。
それが、吉と出るか凶と出るか…分からないが…

「資料は部屋に運んである。
で、秘書とかどうする?
身の回りを世話してくれる人もおくか?
どうする?」

「別に無くても困らないと思うが、
その辺は耀一に任せるよ?」

社の方には俺が行く事は伝えていない。
どれだけの同期が残ってるか分からないが、俺の性格上、良い印象を持ってる同期は少ないだろう。

邪魔されても困る。

ただ、一週間後本社から誰かが視察に来る事だけは、連絡が行っている筈だ。
それまでに、一通り目を通しておきたい。

耀一に案内され社内を見て回ってる時、気になる女性を見かけた。




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