覚悟はいいですか

2、傷(トラウマ)


「ここ、だったの?」

このマンションが建った時、誰かが会社に広告を持ってきて、みんなでその豪華さとお値段にびっくりした。しかも礼の家は最上階だという
ある意味予想通り…と思ってたら、都内にいくつか似たようなマンションを持っていて、仕事によって使い分けているという。休日は郊外の実家か、別荘に行くそうで、予想の遥か上のことにもう想像もつかない……

なぜここしたのかというと、私の職場に近いことと高層階だから外部からの侵入を防ぎやすい
ーーつまりは一番早く安全が確保できる策を採ったからだそう
確かに安全だけど、やっぱり規模が半端ないというか……

高層階専用のエレベーターの中で、そんなことを考えているうちに目的の35階に着く
ポーンという軽やかな音と共に箱が止まり、扉が開いた

内廊下の床にはカーペットが敷かれ、扉は2つきり、その奥側にあるドアの取っ手を礼が握ると、ピッという電子音の後、カチャカチャカチャとロックの外れる音がした

「これで鍵が開くんだ」

手のひらの静脈認証が鍵になっているそうだ
疑問が顔に出ていたんだろう、少しおかしそうにしながら礼が手のひらを見せながら教えてくれた
それって銀行とか研究施設とかにあるものじゃないの?普通の家にそこまで必要?…

「あとで紫織のも登録しないとな……」

なんで?と思ったが、聞く間もなくドアが開き、中へと促されて一気に緊張が高まる

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