皇帝陛下の花嫁公募
第六章 皇帝の婚礼
 リゼットが花嫁になると決まったとき、他の花嫁候補からは表面上は祝福されたものの、言葉とは裏腹の憎しみの視線を受けてしまった。

 試験の審査をずっとしていた女官達からも冷ややかな祝福を受けたところを見ると、あまり好かれていなかったらしい。子供のことでは直接文句を言っただから無理はない。それでも、何故か最終候補に残ったところを考えると、結局、アンドレアスの差し金だったに違いない。

 ネスケルという男は宰相だが、花嫁が誰であろうと興味はなさそうだった。とにかく皇帝がそれなりの女性と結婚してくれれば、それでよかったのだろう。

 母妃もナディアももちろん喜んでくれた。祖父の喜びようはかなりのものだった。孫が皇妃だということが、本当に商売に有利になるのかどうかは判らなかったが。

 花嫁に決まった途端、すぐに結婚式の打ち合わせが始まり、アンドレアスとはあれきり二人きりで話す機会もなかった。
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