黒縁眼鏡と銀縁眼鏡
黒縁眼鏡と銀縁眼鏡
気が付いたら、暖炉の前のソファーだった。
薄暗い室内に、赤々と燃えあがる炎。

……ここは一体?
私は……。

必死に思い出そうとすると、あたまがずきずきと痛み出した。
それでも無理に思考を続けると痛みは増し、割れるようだ。

「気が付いたんだ。
……ああ、無理に思い出さないで。……これ、飲んで」

痛みで滲む視界で、男――声からすると男だと思う――から渡された薬を飲む。
飲むと私の意識はあっという間に沈み、すぐに闇に飲み込まれた。

 
チュンチュンと鳥の声で目が覚めた。
暖炉には残り火が燻り、部屋の中には朝日が差し込んでいる。

手になにかを握りこんでいることに気が付いて開いてみると……眼鏡。
シルバーのその眼鏡は自分のものなのかと思いかけてみたが、度も、サイズも合ってない。

……これは?
それにここは?
私は……。

「目、覚めたんだ」
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