溺愛誓約〜意地悪なカレの愛し方〜
「莉緒」


カーテンを閉じた部屋のベッドの中で、数え切れないほどキスを繰り返した。
リップ音が響くたびに空気に艶かしさが注ぎ足され、飽きることなく唇を求め合った。


唇同士で触れて、ついばみ合って、食んでは舐めて。
舌を絡めて呼吸を乱し、纏っていた布をすべて失った肌を合わせながら、お互いの体温を高めていく。


「このままだと、溺れてしまいそうで怖いです……」


ようやく唇を離した時、乱れる呼吸の合間に思わず本音が漏れていた。
額をくっつけたままの穂積課長が、どこか困ったように笑う。


「いいよ」


短い一言のあと、唇が合わさってチュッと音が鳴った。
私の頬に手を添えた課長は、私を見下ろしたまま視線を絡めてくる。


「溺れろよ、俺に」


真剣な表情とともに向けられた言葉に、胸の奥がキュンと高鳴った。


「きっともう、溺れてます」


恥ずかしげもなく返せば、穂積課長が一瞬だけ瞠目したけれど、すぐに瞳を緩めた。
何度目かわからないキスを交わした時、心も体ももっと深く溺れていく予感を抱いた――。

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