極上ショコラ〜恋愛小説家の密やかな盲愛〜

Chocolat,03 ドロドロに溶けていく

心臓が今にも胸を突き破ってしまうのではないかと思うほど、バクバクと激しく鳴っている。


篠原の端正な顔。
絡みつくような視線。
そして、手首から全身に広がっていく熱。


私の体を熱くさせる要素があり過ぎて、とっくに平常心なんて失ってしまっていた。


「せ、先生……。あの、どいて、ください……」


それでもなんとか訴えた私に対して、彼が返して来たのは綺麗な笑顔。切れ長の瞳が緩やかに細められたあまりにも美しい表情に、思わず息を呑んで静止してしまう。


その一瞬の間に、私の唇は篠原の唇によって塞がれていた。


ラム酒の効き過ぎたチョコ味のキス。
驚きを通り越した私には、ビター過ぎるそれを味わう余裕なんて一切なかった。


程なくして、一瞬だけ唇が離れた隙に、抵抗の言葉を吐こうとしたのに──。

「せっ……!」

彼は生チョコを口に含んで、すぐにまた私の唇を塞いだ。


「んっ……⁉︎」


今度は噛みつくようなキスを何度も与えられ、その度に溶けかけた生チョコがお互いの口腔を行き来する。
部屋の中に響くのは、キスから生まれる官能的な水の音。


そして……ドロドロに溶けたチョコの苦味だけが残った頃、やっと唇が解放された。

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