日本における最高級の洋食器メーカー『宝来陶苑(ほうらいとうえん)』は、洋食器の他に美術的価値の高い陶磁器の製造販売を行っている。

 千九百十年創業の歴史ある会社の御曹司であり、三十歳という若さで、エリート部隊といわれる経営企画部の部長を務める宝来成暁(なりあき)が、口元に薄っすらと微笑を浮かべながら私を見つめている。

 渇いた喉にゴクッと唾を飲み込んだ。

「絵付師(えつけし)をしております、吉岡香澄(よしおかかすみ)です」

 ああ、声が上擦ってる……。

「一級陶磁器製造絵付け技能士の資格を保有しています。今年で入社三年目になります。至らない点も多々あるかと思いますが、ご指導、ご鞭撻のほどよろしくお願いいたします」

 本社会議室に召集された各部署代表の人たちの前で、震える手に気づかれないよう、へその辺りで両手をきつく組む。

 三十秒にも満たない時間だったのに、心臓は飛び出しそうなほど脈打っているし、汗がどこからともなく噴き出してくる。