旦那様は溺愛至上主義~一途な御曹司に愛でられてます~
「もしもし? 香澄ちゃん? ゆみかだけど」

 先日会った時と変わらない、圧迫するような声音に息がつまる。

「うん。どうしたの?」

「どうしたのって、また連絡するって言ったじゃん」

「そうだったね。ごめん」

「急なんだけど、今日ってあいてる? 祥子と遊ぶんだけど、香澄ちゃんもこない?」

 行きたくない。瞬時に浮かんだ言葉は喉でつかえて止まる。

「ねえ、聞こえてる?」

「あ、ああ、うん」

「宝来さんの話も聞きたいし、例の見学会の連絡も宝来さんにしてもらいたいの」

 これは成暁さんとの繋がりがほしいから、仕方なく私に連絡をしてきたって感じかな。

「ね? これそう?」

「……うん。大丈夫だよ」

「良かった! じゃあ詳細はメールするね。アドレスも変わってない?」

「うん」と短い返事をして通話を終了させた。

 無茶なことを言われたらちゃんと断ろう。必要があれば、私と成暁さんの関係についても話そう。

 成暁さんの隣にいたいと望むのなら、もっとしっかりした人間にならなければいけない。これ以上彼に迷惑をかけたくないし、ひとりではなにもできない人間だと思われたくない。

 ゆみかの高圧的な態度に負けないよう、お守り代わりにブレスレットを腕につけて家を出た。
< 131 / 180 >

この作品をシェア

pagetop