大事にされたいのは君

君を一番に想う



それは毎朝変わらない登校風景だった。学校が近づくに連れて同じ制服の学生が増えていく中、一人に「おはよう」と声を掛けられて立ち止まり、振り返る。もちろんそこに居た朝から人目をひくオーラ漂う彼はやっぱり瀬良君で、いつものように彼に挨拶を返すと私達は共に学校へと向かった。

「そういえば、瀬良君と三好君ってすごく仲が良いんだね」

「祐樹?あー、あいつとは幼馴染みだから、きっと吉岡さんが思ってたよりは仲良いと思う」

「だから三好君だけ下の名前なんだ」

「そー。もう幼稚園からの仲だからなー」

それは長いね…なんて、予想以上の親密さに驚きつつ、昨日三好君に言われた心配の重さを改めて本当の意味で実感した。

瀬良君の周りに居る友達を信用していなかった…とまでは言わないにしても、誰もちゃんと本当の彼の事を見ていないのかと、気づいていないのかと思っていた。だから瀬良君の寂しさが埋まらなくて、恋愛に求めて失敗して、私にまで流れ着くはめになったのだと。本気でそう思っていたから、彼のような存在が居た事に驚いた。

「三好君は君の事、すごく心配してくれてるのに」

だから私は、三好君が大事にしてくれている事に気付いていないのかと、彼に問いたかった。こんなに君の事を考えてくれる人が居るのに何故足りないのだと。彼では何が駄目だったのかと。

「え、何?あいつとどんな話したの?」

「君の話。君の事心配してるって話」

「本当に?他には?」

「他って…あとは別に」

そんなに長く話していた訳でも無い為、大体でまとめると全てがその言葉でこと足りてしまった。しかし彼はその返答に満足した様子は無く、「ふーん」と何か考えている様子で適当に返された。

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