癒しの魔法使い~策士なインテリ眼鏡とツンデレ娘の攻防戦~
「私、これから警察に自首します」

若菜の言葉に驚いた遙季は、ブンブンと首を振った。

「私も悠生もそんなことはもう望んでいません。そうしてほしかったら、あの時、警察に中村さんのことを話すこともできたんですから」

「何故,,,そうしなかったの?」

「最後に私を見たときに、中村さん、震えてたでしょう?それに、引っ越しするほど追い込まれてたってことだし」

遙季は、最後に若菜の耳元で

「光琉のことが好きって気持ちがそうさせたのなら、光琉に知らせて傷つけたくなかったんです」

と、囁いて笑った。

「八代くんも,,,本当に,,,ごめんなさい」

もう一度、若菜は光琉に謝ったが、光琉は横を向いたまま一度頷いただけだった。

「本当ならあの時、私も捕まって罪を償うべきだったのに、怖くて逃げてしまったの」

いずれにしろ、義務のないことを強要する゛強要罪゛の時効は3年だ。

゛とっくに時効は過ぎていると思うから゛

と、遙季は苦笑して言った。

別れ際、若菜はもう一度二人に謝罪したのだが、

「でも、安心した。八代くんと雪村さんがまだ一緒にいてくれて。大学も別になって、離れ離れになってるって噂で聞いてたから,,,」

と、余計な一言を残して去っていったため、遙季と光琉の間には険悪なムードが流れ始めたのは手痛い誤算だった。

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