癒しの魔法使い~策士なインテリ眼鏡とツンデレ娘の攻防戦~
「私は高校1年生の時から八代くんのことが好きだった」

ポロポロと話始めた若菜に、光琉は驚いて目を見開いたが何も言わない。

「誰にも靡かないのなら、いっそ、みんなのアイドルのまま卒業してくれるだろうと誰もが思ってた」

遙季も若菜の手を握ったまま、黙って話を聞いていた。

「それなのに、雪村さんが現れて,,,。私は我慢ならなくて,,,それで」

再び、若菜が泣き始めた。

なかなか言葉を紡げないでいる若菜に代わって、

「それで、彼を雇って私を少し脅そうと思っただけなんですよね?」

と、遙季は言った。

「,,,知ってたの?」

「いえ、たぶんそうなんじゃないかなって思っていただけです」

目を真っ赤にした若菜が、遙季を見上げた。

「ま、まさか、あの人がシンナーを吸ってるなんて知らなかったの。駅前にたまたまいたから、゛少し脅してって゛言ってお金を渡した。それなのに,,,ナイフで二人も刺すなんて,,,」

ガタガタと震え出す若菜はこの8年間、どれ程の苦痛に耐えてきたのだろう。

「中村、お前,,,」

怒りで立ち上がりそうになる光琉を、遙季が制止しながら首を振る。

「八代先生、だめです」

臨床心理士の顔になった遙季が、精神科医の光琉を嗜める。

光琉もハッとして、でも渋々と椅子に腰掛け直した。

「中村さんがしたことは決して正しいことではなかったけれど、幸いにも私も悠生も軽傷だったし、こんなに元気です」

遙季は笑顔で若菜を見つめながら、

「あの事がきっかけで私、臨床心理士になったんですよ。沢山の人に出会えたし、この仕事にやりがいを感じています。だから,,,」

若菜を手をギュッと握って言った。

「中村さんも、今日からは前だけを向いて歩き出してください。被害者がいいって言ってるんだから、そうしてくださいね。それが償いになりますよ」

若菜は、何度も何度も謝りながら泣き続けた。

遙季も真相がわかって、若菜に声をかけることも出来て、ようやくあの事件から解放された気がした。

゛よしよし゛

ふと、満足気に若菜の頭を撫でる遙季を、物凄い顔で睨んでいる光琉が目に入った。

゛やば、光琉のこと忘れてた゛

遙季は、申し訳なさそうに光琉を見て゛ごめんなさい゛のポーズをして片手を上げた。


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