Take me out~私を籠から出すのは強引部長?~
春熙の手が、私を自分の方へと向かせる。

「どうして泣いてるの?」

困惑して春熙が私を抱きしめてきた。
厚い胸板はずっと頼もしいものだったのに、いまは息苦しいものでしかない。

「怖い夢でも見たの?」

なにも答えることができずに、ただこくんとひとつ頷いた。
高鷹部長に出会ってからのこの四ヶ月半すべて、夢だったらいい。
夢だったら諦められるから。

「泣かないで、愛乃」

私を泣き止ませようと、春熙が涙を拭うように目尻に口づけを落としてくる。
けれどそれは、嫌悪感しかなかった。

「ごめんね、はるくん。
内容は覚えてないけど、凄く悲しい夢を見たから」

「大丈夫?」

「もう平気、だから」
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