Take me out~私を籠から出すのは強引部長?~
「まだいじけてるの?
機嫌直して」

涙を拭う親指がくすぐったい。
ちゅっと口づけしたタイミングで信号が青に変わり、春熙は慌てて車を出した。

「それでどうする?」

「……焼き肉食べたい」

「愛乃はほんと、それが好きだね」

「うん」

上機嫌で車を運転する春熙に笑って返しながら、心の中でまた、春熙には絶対に逆らわないと固く誓い直した。

――あのとき。

私のトラウマになったのは、私に危害を加えた人たちじゃなく、――春熙だ。
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