分け合う体温
その時理人が、唇を拭きながら言った。

「離れない。何があっても、由乃を離さない。」

「はあ?」

英吾は、近くにあるごみ箱を、思いっきり蹴った。

「おまえはそれでいいよ!でも由乃は、どうするんだ!結婚もできず、子供も産めず!おまえと一緒にいる事を、後悔する人生を送るんだぞ!」

「後悔なんか、させない!」

「まだ、言うのか!」

一瞬、英吾の手が上がった。

「理人!」

怖かったけれど、英吾と理人の間に、目を瞑って入った。

「由乃……」

英吾が呟く。

「お願い、英吾。今は見逃して。」

涙を流しながら、必死に訴えた。

「お願い。」


神様。

私達を許して。

私達は、ただ愛し合ってるだけなんです。


そして英吾は、何も言わずに、去って行った。
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