打って、守って、恋して。
彼が私に求めるもの

それは、もうほとんど“熱”だった。
熱くて苦しくて、這い出そうと思えば出来たはずなのに、したくない。

これからあなたを大切に扱います、と全身に伝えてくるような優しく丹念なキスをひたすら浴びていた。
こんなに熱い腕の中にいたら、とけてしまうんじゃないかと思うほどだった。

彼の手が私の身体の表面をやわらかくすべるたびに奥底に隠れていた自分の本能が引き出されて、うまく息ができない。


この情熱は、きっと野球をしている時も同じなのだろうなと片隅で考える。
表には決して出さない、内に秘めた情熱。


「なんか、慣れてる……」

「なにが?」

「女の子の扱い方」

腕を立てて起こしていた身体をどさっと私に預けるように崩れた藤澤さんが、なんで今それを…と呆れた声で言うのが聞こえた。

「慣れてないよ。正直、かなり久しぶり」

「嘘」

「野球ばかりで、恋愛に裂く時間なんてないよ」

「私とはちゃんと会ってくれてたのに?」

人見知りでなかなか愛想よくできないと言うけれど、そんなのは最初だけだった。
まめではないけどそれなりに連絡はくれていたし、凛子が言う通り非モテタイプではないのだ、絶対に。

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