敏腕室長の恋愛遍歴~私と結婚しませんか~
2章 室長の秘密
秘書になる近道は頭が良くて容姿がずば抜けて美しいこと、と私は考えていた。

だけど私にはそのどちらの要素もないので、あとは一芸に秀でるしかないと思い語学力に力を入れてきた訳だけど。


「うわ、終わんない……」


もう既に誰の気配もない秘書室。
今日は同期のみんなで飲もうと誘われていたのに、重役さん達から依頼されている翻訳作業の終わりが見えず焦り始める。

けれどこれまで私がこなしてきた成果が認められ、私を信頼して頼まれた仕事なのだと思うとそれに応えたいという思いが強くなり、手を抜くことができないので時間も掛かってしまっていた。


「神田さん」

「え……、あ、室長……」


もう誰もいないと思っていたところへ声をかけてきたのは室長だった。

いつも社長はあまり遅い時間まで社内にいることがないので、必然的に室長も早めに上がって残りの仕事があれば阿川さんに引き継いだりしている。

そういえば社長は今夜遅い時間に海外拠点との電話会議が入ってるとか常務が言ってたな。

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