星空電車、恋電車
「星、見るんじゃないの?」

は?
「ああ、星。星ですね。も、もちろん見ますよぉ」

京平先輩たちのふざける声がうるさいとか、二人きりでいるのに暗闇に行かなかったから残念とか思ってません。うん、たぶん。

雑念に気を取られていた私はすぐ隣から聞こえてきた樹先輩の声に焦って声がひっくり返りそうになる。

もうっ、こうなったのはゲラゲラと笑って走り回っているムードぶち壊しの京平先輩のせいだ。
睨みつけたい気持ちをどうにか抑えて真上の夜空を見上げた。

しばらくすると暗闇に目が慣れてきて数多くの星が綺麗に見えはじめた。

「こんなに見えたんですねぇ」

あれ?
話しかけたのに隣で一緒に星を見上げているはずの樹先輩からは返事が戻って来ない。

まさか疲れて眠っちゃったとか?
心配になって隣を見ると、樹先輩は星空じゃなくて京平先輩たちの方を向いていた。

「せんぱい?」

やっぱり私と会話したくないとか星より京平先輩たちと一緒にはしゃぐ方が良かったとか??

樹先輩の視線に先輩は京平先輩たちと一緒にいる方がいいみたいだと気が付いてしまった。
途端に気分は急降下していく。

そうだよね。いつも一緒にいるのは京平先輩でいつも仲よさそうだし。
私は憧れの樹先輩と二人で星が見られると思ったけど。

思わずふうーっとため息をついてしまった。

私がついたため息に気が付いてしまった樹先輩がこちらを振り返る。

「千夏?」

「樹先輩。私なら一人で星空見てますから大丈夫です。樹先輩は京平先輩たちの方に行っても大丈夫ですよ」
私のせいで無理に引き留めているみたいで気が引ける。
< 10 / 170 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop