星空電車、恋電車
「千夏こそあっちに行かなくていいの?」

「私はいいです。星空が見たいです。もしかしたら本当に流れ星が見えるかもしれないし。私は一人でも大丈夫です。だから先輩は遠慮せずあっちのグループに行っていただいてもいいですよ」
本当は行って欲しくないけど、無理やりニコッと笑ってみた。

「いや、いい。俺もここに居る」

そう言ったきりまた無言になった樹先輩と微妙な空気のまま二人で夜空を見上げた。

黙ったままの樹先輩から妙な圧迫感を感じて居心地が悪い。
でも、片思いしている樹先輩と二人っきりになれるチャンスなんてこの先やってくることなんてないだろうと思うと、胸の鼓動がどんどん早くなって樹先輩側の右半身の神経が過敏になっていく。

二人の距離は40センチ。
もう少し近付きたいなあと思っていた時だった。

「千夏ってさ・・・京平のことが好きなの?」

思ってもみない言葉が隣に座る樹先輩の口から出たように聞こえた。

え、えええ?

京平先輩?何で私が京平先輩?どうしてあの京平先輩?
驚きすぎて声が出ない。

ひと言でいうなら驚愕。
目を丸くして隣の樹先輩を見つめてしまう。

「あ。あれ?その顔・・・もしかして違う?」
樹先輩も私の顔を見て驚いたように目を見開いた。

私の方は驚きすぎて声も出ない。口を半開きにしてこくこくと何度も首を縦に振るのが精いっぱい。

あ、あれ。首を縦に振るのはは肯定?否定?どっちだっけ
ああー、もうっわかんないけどっ
「ちがいますっ。何で京平先輩なんですかっ」

「なんだ、違うんだ。俺はてっきり・・・」
樹先輩が俯き頭を抱えている。

え、え。
これってどういう状況?
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