星空電車、恋電車
樹先輩、もう私のメッセージ読んだかな。

どう思っただろう。
別れ話をする手間が省けてホッとしたかな。
元カノの存在なんて煩わしいだけだろうし、どこの大学を受けるのかは知らないけれど安心して受験勉強ができるはず。
推薦入試を辞めたことも教えてもらえなかった彼女だなんてどんだけ軽い存在だったんだろう。


…辛いのは私だけ。
近くにいたら彼のことを忘れられない。だから、きっとこの選択が正解。

母の前で泣きたくない。これ以上心配をかけたくないから、こみ上げる涙を両手の人差し指の腹に親指の爪を食い込ませて目を閉じ、ぐっと堪える。

新しい生活が始まる。
しばらくは忙しい毎日が過ぎていくはず。
きっと大丈夫。

旅立ちの日に『願い事を叶える幸運の星空電車』というなんとも怪しげな電車にも乗れたんだしね。

ご利益なんて欠片も信じていないけれど、あるのならばこの電車に祈ろう、私の未来を。

ーーーどうかこの先、優柔不断な男にひっかかりませんようにーーー






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