星空電車、恋電車
再会

再会前夜

***

「やだ、しっかりやりなさいよ。こっちも持って」
「人使い荒いよ。いきなり呼び出されて、こっちだってわざわざ来てやってるのに」
「重たいのでこっちも手伝って下さぁい」

B号館にある図書室からの帰りにたまたま通りがかった広場でワイワイと騒ぎながら荷物を運んでいる7~8人の男女を見かけた。

どこかのサークルかゼミのメンバーかがみんなでポスターやチラシ、段ボール箱を運んでいるらしく数人いる女子はきゃあきゃあと声を出している。

にぎやかだな・・・

こちらは先週からほぼ毎日朝一番から夕方までびっしりと詰まった講義の後にさらに図書館で調べ物をしていた。さすがにやりすぎたようで目の奥に痛みが出てきてしまってもう少しやりたかったのを諦めて今日は早めに帰ることにしたのだ。
そんな最悪の体調に少し離れたところにいる女子たちのかん高い騒ぎ声が聞こえてきて癇に障る。女子たちの甘えたような声やかん高い笑い声が疲れた頭に響いてきて思わず眉をひそめてしまった。

「重たいんですぅ。助けてぇ」
そこの女子、甘ったるく語尾を伸ばすな。聞いている方が不愉快。
男子がいなくても同じ話し方してる?

楽しそうでうらやましいという感覚はなくてただきゃぴきゃぴうるさいと思ってしまう。

はあ、ダメだ。私相当ひねくれてる。
さっさと離れようと身を翻したところである言葉に私の耳が反応した。

「樹、こっちも持ってよ」

樹?いつきって言った?

まさか。あの集団に樹先輩がいる?

反射的に俯いて顔を隠し、門に向かう歩みを早めた。

前回の樹先輩や京平先輩と再会した時のことで私は学んでいた。
危機を感じたら直ぐに逃げ出さないといけないってこと。

驚いて動けなくなったらダメなんだ。見つかる前に逃げること。
そうでなければかなりメンドクサイことになる。

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