触れられないけど、いいですか?
そんな私が、昨夜は……


『今まで、一人で抱え込んでいたんですよね。よく頑張りましたね』


優しい言葉と共に頭を撫でてもらって。


いやいや、こんなことでなに赤くなってるの、私!
いい大人が、キスならともかく頭を撫でてもらったくらいで照れるなんて!


熱がこもった頬を冷ますように、左手でパタパタと顔を仰いでいると、父に気付かれてしまった。


「さくら。何をそんなに照れてるんだ」

ズバリと言い当てられると恥ずかしくて何とも返せなくなるけれど、


「あら、照れたっていいじゃない。翔君、こんなに素敵な方なんですもの」

と、母がフォローしてくれる。そして。


「恥ずかしがるくらいが丁度いいわ。お母さん、心配してたのよ。さくらが実は、政略結婚を嫌がってるんじゃないかって」


そう言われ、少しだけ胸がズキッと痛む。
嫌がる……というのはなかったけれど、政略結婚について、仕方ないことだと考えていたのも事実だったから。


でも、確かに……今は〝仕方ない〟と割り切っているというよりは……


「さくらさん」

「は、はい」

「結納や結婚式や、あと引っ越しなど、今後決めていかなければいかないことが多いですが、どうぞよろしくお願いします」

「こ、こちらこそよろしくお願いします!」


ーー今は、〝翔さんと〟一緒に歩んでいくことを考えている。


彼はとにかく優しくて、何故ここまで親切にしてくれるのかと疑問に思わないこともないけれど、私に好きになってもらえるように努力するだなんて言ってくれたり、私の男性恐怖症を治すことまで協力してくれたり、こんなに優しい人はなかなかいないと思う。


だから、私も彼の為に出来ることを頑張らなければ。


彼に相応しい妻になる準備は勿論だけれど、

まずはーー。
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