イジワル御曹司と契約妻のかりそめ新婚生活
約束~歩実side~

眞島会長の訃報から、一週間が経つ。
マンションに帰りつき、暗い玄関と彼の靴がないことに今夜も落胆した。

「明日は帰ってくるかな」

一週間、毎日玄関で同じ言葉を呟いているような気がする。
重い足取りで中に入り、シャワーを浴び、リビングでテレビをつけて本を開いた。毎日、いつもと同じように過ごすことにしている。

だけど、食事がほとんど喉を通らない。
本を開いても、一頁も進まなかった。読書に集中できないから、自然と寝室に行く時間も早くなる。

しかし、眠れない。
ベッドには、郁人に匂いが染みついている。それが一層、寂しさを募らせて、会いたくてたまらなくて、眠っても夢を見てはすぐに起きてしまう。

良い夢のときもあれば、悪い夢の時もある。どちらにせよ、はっと目を開けた時にいつも、郁人がまだ帰らないことを思い知らされた。
今夜も、枕を抱いて何度も寝返りを打ち、うつらうつらと浅い眠りを繰り返していた時だった。

微かな物音を聞いた気がした。

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