イジワル御曹司と契約妻のかりそめ新婚生活
思いがけず、快適
***


 ――もはやこれは、運命ではないだろうか。


 婚姻届けを提出し社内でも公表して、二週間。


「ほんっとに、どうして、なんでですかあ」


 私は少々面倒くさいのに絡まれていた。オフィスで向かいのデスクから、パソコンの影にかくれて恨みがましいセリフと共にじっとりとした視線が飛んでくる。


「春に営業部に来たばっかりじゃないですか。なのになんで佐々木さんと結婚できるの」


 ……だから、上司の仲介があったとそれも公表されたでしょうが。
 反論したらしたで、どうやって紹介を頼んだだとかなんだとか質問が増えるだけだとわかりきっているのでスルーを決め込んでいる。


「河内さん」
「なんですかぁ」

「今日までの書類があるとかなんとか言ってませんでした?」
「もう終わってまーす」

「見直ししてくださいね、いつもミス多いんで」


 ああ。こういうこと言うから嫌われるんだろうなあ。わかっちゃいるんだけど、言わずにおれるか。だって本当にミス多いんだもの。ここは遊び場でもなければ婚活パーティでもない。仕事をちゃんとして欲しい。

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