平凡女子ですが、トリップしたら異世界を救うことになりました
第五章
 ダフネ姫は皇都へ戻った翌日、叔母であるイヴァナ皇后に面会するために、皇宮へ赴いていた。

 ひと晩経っても、桜子の存在に煮えくり返った腹が収まらないのだ。頼りになるイヴァナ皇后にお願いして、桜子を排除してもらうつもりだ。
 
 今回のディオンとの婚姻もずっと言い続けて、念願が叶った。それがアシュアン宮殿へ行ってみたら、わけのわからないみすぼらしい娘がおり、ダフネ姫は危機感を覚えた。
 
 以前から、ベルタッジア国の皇子の中で群を抜いて美しいディオンに憧れていたダフネ姫だ。ようやく皇帝から勅命を賜り、天にも昇る気持ちだったのだが、桜子の存在に切羽詰まった気持ちになっている。

「皇后さまっ!」

 後宮の一番豪華で広さのある部屋を与えられているイヴァナ皇后は、女官たちにうちわを仰がせ、優雅に目の前で踊る舞姫を鑑賞していた。

「ダフネ、ここにお座りなさい」

 イヴァナ皇后は、自分が座る長椅子の前の椅子を勧める。

 煌びやかで豪奢な部屋に何度も訪れているダフネ姫は、勧められた椅子に気後れすることなく腰を下ろす。

 後宮には十人の妃がいるが、中でも十五歳のときに皇帝に嫁いだイヴァナ皇后は第四皇子を産み、地位を安泰なものにしていた。

 第一皇子から第三皇子までの母はすでに亡くなり、今は第五皇子の母であるメイサ妃が、イヴァナ皇后に次ぐ権力を持っている。

 その他の妃は美しいが、普通の家庭に育ち、皇帝が町で見初めた者であった。
 
権力のあるイヴァナ皇后の癪に障らないよう、メイサ妃以外の八人の妃はひっそりと後宮で過ごしている。

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