平凡女子ですが、トリップしたら異世界を救うことになりました
「ダフネ、昨日は嬉しい日だったのでしょう? なぜそのように憂鬱な顔をしているの?」
「だって、皇妃さま。ディオンさまったら、みすぼらしい娘を囲っていたんです」

 ダフネ姫はイヴァナ皇后に泣きついた。

「みすぼらしい娘? 黒髪の娘のことは知っているわ。でも、あなたと比較にならないくらいの貧相な娘だと聞いていてよ。もともと第三皇子は女好き。気にしすぎではなくて?」

 密偵としてアシュアン宮殿で働いている者から、桜子のことは一報が入っている。

「それでも嫌なのです」

 ダフネ姫の泣きそうな顔に、イヴァナ皇后は微笑む。姪が可愛くて仕方がないという笑みだ。

「わが国の皇族の男は、たくさんの女を寵愛するわ。それくらいわかっているでしょう?」
「私は帰り際に、今度お目にかかるときまでにあの娘がいないことを望むと言ったんです。そしたら、面倒を見ている娘だからそれは出来ないって。皇妃さま、私のプライドはズタズタですわ。お願いです。あの娘をディオンさまから排除してくださいませ」

 ダフネ姫はイヴァナ皇后に甘えるように抱きついた。

「まあまあ、、仕方がないわね。一度ここへ呼びつけましょう」

 イヴァナ皇后はダフネ姫に約束した。桜子がディオンにとってどんな存在かを見極めるのも一興だと、ほくそ笑んだ。

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