平凡女子ですが、トリップしたら異世界を救うことになりました
第七章
 その日の夕食前。桜子はザイダに湯浴みのあと、香油を塗ってもらうように頼んだ。

 それでザイダはピンときたようだ。

「サクラさま、とうとうご決心なさったのですね!」

 桜子は恥ずかしくなり、一気に顔を赤らめた。

「もちろん、お支度、お手伝いさせていただきます」

 うきうきした足取りのザイダは、衣装部屋へ行ってしまった。

(決心か……たしかに決心はしたけど……)

 ディオンの妻にはなりたい。だが、そのために生じる犠牲は、収拾がつかないほど多大なものである。

「サクラさま! ピッタリなご衣装を見つけました!」

 戻ってきたザイダは、純白の薄い生地に金糸で刺繍された衣装を腕にかけていた。

「ありがとう。とても綺麗」
「では、湯殿へ参りましょう」

 ザイダは桜子の思案顔に気づかなかった。
 
「サクラ、なんて綺麗なんだ」

 ディオンの私室の居間に姿を見せた桜子に、ディオンは感嘆の声をあげた。

 長い黒髪は両耳の上でクルクルと巻かれ、あとは垂らしている。純白の衣装は桜子によく似合い、ザイダに塗られた香油とマッサージのおかげで、肌が艶々になっていた。

「そんなに見つめないでください……」

 本当に自分が綺麗になったのかわからないが、ディオンは喜んでくれている。



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