エリート御曹司は獣でした
呆れ顔の香織に指摘された通り、普通サイズのお弁当も、今、目の前に広げている。

たった数口分のご飯の横には、肉巻きと生姜焼き、豚カツとウインナーを詰め、彩りにレタスとミニトマトをほんの少々添えたものだ。

八割が肉で占められた、この肉弁当は、私の手作り。

ひとり暮らしなので、自分のためだけに、毎朝早起きして作っていた。

そして今朝、ペットボトルのお茶を買おうとコンビニに立ち寄った際に、目についたサラダチキンが美味しそうで、つい手に取ってしまったというわけである。


私の肉だらけの昼食に疑問を投げかけた香織はといえば、昼時に事業部にやってくる訪問販売業者のサンドイッチを食べていた。

スカートを拭き終えた私は、お弁当の豚カツに箸をのばしつつ、「その理由、説明いる?」と彼女に言葉を返す。

すると香織は目を瞬かせ、一拍置いてから「いらないね」と笑った。


「肉が好きだから、だよね。入社時から知ってる。ごめん、聞いた私が馬鹿だった」

< 2 / 267 >

この作品をシェア

pagetop