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『ちょっと勉強してから寝る。有紗ちゃんおやすみ』

 千晃からのメッセージに『今日もおつかれさまでした、おやすみなさい』と返事を打って、有紗はベッドの上に倒れ込んだ。
 その三分の一を占拠していた白イルカのぬいぐるみをぎゅっと抱きしめて、顔をうずめる。

(森住さん、キスのこと完全スルーだった……)
 仰向けになって、ひとつ息をつく。

(忘れちゃったわけないし、森住さんにとっては特別なことじゃないのかな)
 千晃にとってはもう過去のことなのかもしれないが、誰かと深い関係になったから、心暖の存在があるのだ。

 昼休みはただ動転しているだけだった。けれども時間を追うごとに、有紗の中で意味を増していく。

 幼稚園から厳しい校則の敷かれたミッション系の女子校に通っていたこともあって、思春期は完全に男女交際禁止。その流れで、有紗は女子大時代のほとんどを、同性の学友と過ごしていた。

異性と当たり前に会話をするようになったのも就職をしてからで、恋に憧れつつも、縁遠いままここまできた。