恋の餌食 俺様社長に捕獲されました
この恋を諦めない


刻一刻と時が過ぎていく。
遠藤から耳を疑うような話を持ち掛けられてから、十日が経過。あれから遠藤の動きはないが、陽子の顔は日一日と沈んでいく。
それを見るたびに、梓は切なくてやるせない気持ちになった。

(お母さんを救えるのは、私だけなのかもしれない)

そんな思いが日増しに強くなっていく。

これまで大切に育ててくれた母親をこのまま見過ごしていいのか。
大切にしてきた店を諦めさせていいのか。

梓はずっと自問を続けていた。

陽子に笑顔を取り戻させることができるのは、自分をおいてほかにいないのではないか。

梓にとって一樹はなににも代えがたい存在。でも、一樹にはもっとふさわしい女性がいるだろう。大病院の御曹司であり会社社長に見合う家柄で、美しい女性が。

自分が我慢さえすれば、一樹のいない毎日に耐えさえすれば、陽子の不安は取り除ける。

眠れない夜を過ごした翌日の朝、梓はひとつの結論に達した。

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