【短完】赤いチェックのスカートが翻った夏が来る。
君を支えたくて
夏は嫌いだ。無駄に暑くて蝉が五月蝿いから。


1番古い記憶はなにかと問われれば、私はきっと7歳の頃のものだと答えるだろう。

いや、ハッキリと鮮明に思い出せる記憶、だ。朧気なものはもっと前のものだって覚えてる。

私を抱きしめた母の温もりや、父の笑い声。楽しそうな、明るい我が家。

にこり、と優しく笑ってくれる母親。

朧気な記憶は楽しいものばかりなのに、現実は夢を見させてはくれない。だって、私が持っている記憶の中で1番確かなものは別れのものだから。

暑い夏だった。今と同じくらいに。

明け方、そっと扉を開いて出ていこうとするお母さんと玄関で話したこと。

トイレに行こうと思って起きたらお母さんがいなかった。気になって探してみたら玄関に居たのだ。

「どこかに行くの?」

まだ小さかったから、倍くらいの身長があるお母さんを眠い目を擦りながらキョトン、と見上げて聞いた。

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