一目惚れの彼女は人の妻
一目惚れの彼女は人の妻〜俊輔Side〜
 ある春の休日。俺は近所のホームセンターへ買い物をしに行っていた。車で行くほど遠くはなく、天気も良かったので歩いて行った。

 買い物の目的は、熱帯魚のエサをひとつ。それだけだった。熱帯魚に関する買い物は、普通は車を飛ばして専門店へ行くのだが、いくら専門店が安いと言っても、エサひとつではガソリン代の方が高くついてしまうと思い、近所のホームセンターで済ます事にしたのだ。

 目的のエサは見つかったが、やはり専門店より遥かに高く、下手したらガソリン代が出たかもしれない。少し後悔したが、すでに今更だ。俺はそれを手に持ち、ここへ来たら必ず寄る、熱帯魚売り場へ足を運んだ。

 見るだけなのだが、俺はそれが大好きだ。思えば、子どもの頃から熱帯魚だけでなく、ペット関係の売り場へ行くのが大好きだった。

「うわあ、このお魚可愛い。俊君、ウチもこういうのを飼おうよ?」

 ミッキーマウスプラティの水槽の前を通り過ぎようとした時、連れの女が俺の腕に手を絡め、甘えた声でそう言った。
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