気がつけば、恋のはじまり
(あれ・・・?)


目が覚めて瞼を開けると、あたたかな薄橙の光に包まれた。

天井にある大きなまるい照明が、この空間を染色しているようだった。


(ここは・・・)


家じゃない。

一人暮らしの私の部屋の照明は、丸い輪っかが2つ連なる、白光りする蛍光灯。

こんなに優しい光を放つ照明ではないはずだけど・・・。

寝ぼけた頭で考えながら、ふっと視線を右に移すと。


(!)


「み、宮本くん・・・!?」

私はガバッと起き上がる。

だって、同期の宮本くんらしき男性が、ベッドサイドで顔を突っ伏して眠っていたから。

「・・・ん?あー・・・、起きたか」

宮本くんらしき男性は、あくびをしながらむっくり起きた。

濃げ茶色の長めの前髪。へんなクセがついてしまっているけれど、凛と整った顔立ちは、やっぱり同期の宮本くんだ。

「あ、あの・・・これって、どういう状況なんだろう?」

ここに至るまでの経緯を、全く覚えていなかった。

尋ねると、宮本くんは「ああ」と言って、腕組みをして教えてくれた。

「おまえ、打ち合わせ中に倒れたんだよ」

「えっ・・・」

「で、仮眠室借りて休ませてもらってた」


(う、うわ・・・!)


本日。

私と宮本くんは、自社と共同プロジェクトを進めている「アルトリード社」を午後から二人で訪れていた。

これまでに何度も話し合いを重ね、まとまってきたプロジェクト。

やっといい流れになってきたというのに、こんな失態をするなんて。
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