気がつけば、恋のはじまり
「どうしよう・・・」

「大丈夫だよ。打ち合わせはいいからとりあえず休めって、仮眠室貸してくれたんだ」

「・・・怒ってた?田丸さん」

「怒ってねえよ。スケジュールきつかったかなって、芹澤のこと心配してたぞ」

「えっ・・・」

田丸さんは、アルトリード社の社員で今回のプロジェクトリーダーだ。

50代半ばの男性で、いつも厳しい印象だから、「仕事中に倒れるなんて自己管理がなってない!」って、怒っているような気がしてしまった。

「とにかく。仕事のことはいいから、とりあえず今は休んどけ」

「うん・・・。・・・あ、今何時かな」

「17時過ぎ。・・・もうそんな時間になるか。休んどけって言っても、そろそろ帰らないといけねえな・・・。大丈夫か」

「うん、大丈夫だよ。田丸さんたちには、後でまた改めてお礼に来なくちゃ・・・」

私のことは、宮本くんが会社に報告してくれて、「このまま直帰していい」と部長から指示をもらっておいてくれたそう。

うたた寝をしていたようだけど、やっぱり、宮本くんはしっかりしている。

「ごめんね。ありがとう、いろいろ・・・」

「ああ、いいよ。芹澤のためだし」

平然と言われ、一気に身体が熱くなる。

けれど気にしていないフリをして、すぐに話題を切り替えた。
< 2 / 7 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop