迷子のシンデレラ
3.通じそうな気持ちは

「おはよ……って、あれ?
 智美、なんだか雰囲気が違う」

 いち早く恵麻に気付かれてしどろもどろに返答する。

「あの、葉山さんに口紅を戴いて……」

 小声で返すと恵麻は心底驚いたようで「何それ!」と大きな声を上げて注目を浴びてしまった。

 二人して小さくなっているとみんなそれぞれに通常業務へと戻っていく。

「ごめん。大きな声を出して。
 だって口紅だなんて。
 親密っぽくて……ってもしかしてあの日のこともうバレちゃったの?」

「ううん。まさか。違うと、思う。」

 葉山からもらった口紅は控えめな薄いピンク色だった。
 気恥ずかしい気持ちになりながらも使って欲しいと言われ戴いた以上、つけてみることにした。

 控えめでも可愛らしい色合いは地味な顔立ちを華やかにさせた。
 唇に合うように化粧を施していくと、いつもより艶やかになった。

「まぁ、どんな理由であれ、智美が自分を着飾る気になってくれたのなら、彼も少しは役立ってるかもね」

「役立つだなんて、そんな言い草……」

「いいの。そのくらいに思って智美はちょうどいいんだから」

 よく分からない恵麻の言い分に苦笑しつつ「週末、買い物に行こう!」と楽しげな恵麻に頬を緩ませた。

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