私はマリだけどなにか?
1「私はマリだけどなにか?」
山田麻理枝17歳、普通の女子高生、書道部3年生。新入生が入部し、マリが指導することになったのだが… 運河沿いを歩いていると突然ガラの悪い女子3人組にお金を要求された。マリのとった行動とは。

2「私はマリ、パートだけど何か?」
マリは観光客相手のショップTGで働くことになった。店員のシゲミがマリの指導あたった。職場に花岡が様子を見に来た。そこにいたのは同級生で店長のテイジだった。

3「私はマリ、体外離脱したけどなにか?」
マリが拳法の道場で突然体外離脱を経験する。パート先のテイジとシゲミがマリの体験を分析する。相談を受けたテイジは、あるアイデアを思いつき商売に結びつけてしまう。そのアイデアがショップTGのヒット商品となる。

4「私はマリ、進路で悩んでますけどなにか?」
高校卒業後の進路決定に悩むマリにアヤミが、知人で先輩の路上占い師ピリカを
紹介する。初めてあったピリカの印象にマリは衝撃を受ける。  

5「私はマリ、東京に来たけどなにか?」
高校を卒業したマリは突然東京に出ると宣言し、上京の資金を2年で貯めることにった。東京には目標とする人物がいて彼女に会うため。上京したマリのとった行動とは。

6「私はマリ、花子と3年過ごしたけどなにか?」
花子と同じアーケードの下で働く事になった花子。ある時ジッタが突然現われた。花子と初対面のジッタの反応は?師と仰ぐ花子が突然旅に出ると言い残し吉祥寺を離れた。残されたマリは。

7「私はマリ、時間が変だけどなにか?」
突然花子から今小樽駅にいると連絡が入った。話を聞くためにショップに集まった。花子の帰省後マリはアーケード街の路上で書を売る事になった。そんなある朝だった。朝起きたら昨日の朝に戻っていた。

8「私はマリ、ジッタが死にそうだけどなにか?」完結編
不思議な日を過ごし思案にくれている頃ジッタ先生が入院中と聞かされる。見舞ったマリが目にしたジッタは別人のような様相。看病するマリにある心の変化が訪れる。

「ショップTGのシゲミ」
小樽のスピリチュアルショップTGで、働くことになったシゲミが繰り広げる奇想天外な発想を描いた作品。シゲミの販売方法にクレームをつける主婦連とのやり取りを見守る店長でオーナーのテ~ジの心理とは?

「ショップTGのアヤミ」
店の運営がマンネリ化した時にテ~ジはシゲミから新商品のアイデアを聞く。そのアイデアを双子の姉アヤミが制作して販売する。そんなところに消費者センターから来たという名刺も持たない不穏な婦人が店にやってくる。シゲミとアヤミが対応する…1「私はマリだけどなにか?」

 ここは北海道小樽市。港が一望出来る閑静な住宅地。

市内の高校に通う女子生徒がいた。名は山田マリ十七歳。
マリには変わった性格とそれを助長する才能がある。
書道部の顧問はマリに対し、うまく理屈で説明できない何かを感じていた。

マリが廊下を歩いていると後ろから男性の声が「マリ、おはよう」担任兼書道部顧問の花岡仁太三十一歳独身である。
マリは学生カバンを回しながら「先生おはようございます。ちゃんと朝飯食ったか?」

「お前ねぇ!先生はこう見えてもお前より年上。しかも担任の先生。
俺の言っている意味が解る?」

「だからどうしたの? 鼻をかじった先生」

「あのさっ、俺の名前を途中で切らないでくれるかな~なんか変に聞こえるんだけど」

「先生の気のせいだな・・・で、なに?」

「おう、そうだそうだ!今年入部した一年生の世話役を頼まれてくんない?」

「おい、ジッタ。人にものを頼むのにその『くんない・・・』
ってある?どんな教育受けたんだ?ったく」

「あっ!そうだな・・・先生が悪かった。忘れてくれ」

「一度男が発した言葉をそう簡単に撤回すんな」

「ご、ごめんなさい」

「わかればいい。で、なんで私なのさ?」

「お前三年生だろ?だからだよ。あたりまえだろ」

「ジッタ・・・去年の事もう忘れたの?私が指導したせいで三人も
退部したじゃない。まだ懲りないわけ?」

「あれはお前が歪な教え方をしたから一年生が勘違いして戸惑ったんだ」

「何が?」

「だって、お前ねぇ書道習いに来た一年生になんでピアノのレッスンするの?それと、あの山口早苗にお前の家の屋根のペンキ塗らせただろ?」 

「だってあれはさ、強制じゃないって言ったもん。断ってもいんだよって」

「確かに言った。でもその後でなんつったか覚えているのか?」

「なんも言ってませんけど~~」

「あれ?その山口はお前が『私も一年の時は塗らされたの。まっ!書道部の伝統のようなもの…アハハ』って言ってたぞ。
この書道部のどこにそんな伝統があるんだ? お前、いったいどの先輩の家の屋根を塗らされたんだ? 名前を言ってみろ」

「先生、あのさっ!男が小さい事でがたがた言わないの…たく・・・わかった?」

「うん、分かった・・・うん???  なんで? 先生の立場がなんでマリより下な訳?」

「いいよわかったよ。了解。今年の一年生は、わたしが引き受けました。
それでいんでしょ・・・はい、お終い」

 
そして書道部に新入生の女子三人、男子一人が入部した。

マリが挨拶した。

「入学おめでとうございます。わたしは山田マリです。 一年間の短い付き合いになりますが宜しくお願いします。 分からないことがあったら聞いて下さい。 書道は習字と違って形にこだわりません。 
味で勝負!リズムとフィーリングを大切に。 正解はありませんから感性で書いて下さい。 こう言うと怒られますが、顧問の鼻をかじった先生も字は下手くそです。 味専門です。 本人は宇宙からのバイオリズムがどうのこうのと言ってますがあの顔で宇宙は似合いません。 君たち一年生でも顔を見れば解ります。 宇宙というよりも水槽の中のクリオネが昼寝してる感じ。ではお楽しみに。 以上」

「山田先輩、ひとつ質問いいですか?」

「はい、どうぞ」

「この書道部は過去になにか賞を頂いた事があるんですか?」

「賞? …なんで?」

「全国競書大会とか大書道展とかに出品されないのですか?」

「あんた名前は?」

「泉谷です」

「そう、あんたはなんで書道部に入ったの?」

「書が好きで書を書きたいからです」

「うん、私も書が書きたいからここにいるの。別に全国競書大会とか興味ないの。私は大会に出品して賞を貰うために書いてないし、興味もありません。そういう大会に出たい人は勝手に出品して下さい。否定はしません。そういう形式にこだわる人は、こことは別に習字部でも作ると良いかもね。ここは書を競うのでなく書を楽しむところなの。他に質問は?」

「蘭島からきた蛯子です。マリ先輩の作品はどれですか?山田マリさんの名前が見あたらないのですが?」

蛯子は壁に貼っている数点の書を指して言った。

マリはブツブツ言いながら作品を机の中から取り出し「これが私の作品。どう?」

蛯子がジッと見て口を開いた「?私、これ分りません。これがそのリズムっていう作品ですよね?」

「お前ねっ!生意気言ったらぶっ飛ばすよ!」

「あっ、いや、すいません!つい・・・」

「ついなにさ? 続き言ってみな・・・」

蛯子は翌日から部に来なくなった。

数日後、花岡が「マリ、今朝方、蛯子っていう一年生が退部届け持ってきたけどなんか聞いてる?」

「私、なんにも聞いてません・・・」

「そうか、わかった・・・」

花岡は内心思った。「これって、退部一人目かな?」昨年のことが頭を過ぎった。

ここは書道部。

「今日はテーマがあるの。各々自由な発想で丸を書いて下さい」

「??丸ですか?」

「そう、丸よ丸」

「丸になんの意味があるんですか?」

「宇宙よ。各々の宇宙を書くの。よく禅宗のお坊さんが書いてるでしょ。お寺なんかの掛け軸にもあるやつ。あれよあれ・・・」

一年から三年までの部員十名が丸を描き始めた。

一年生の書を並べてマリが「見てごらん。単純な形だけど三人とも違うでしょ?丸には自分の内面が現われるのよ。こぢんまりした可愛い丸。こっちは大胆不敵な我が道を行くっていう丸。これは均整の取れたはみ出しのない几帳面な丸。 個々の性格が出るのよ。ねっ、面白いでしょ?たった丸ひとつが沢山のことを表現する。それが書の味なのよ」

「ところでマリ先輩のはどんな丸ですか?」

「私の見る?」

「はい!」一年生全員が返事をした。

「ほれ、これが私の」

「ぷっ!」全員が吹き出した。

半紙いっぱいに書いた丸は完全にはみ出していた。

「マリさん、 これはどう理解したらいんですか?」

「そうね、自分で言うのもなんだけど。協調性がない、融通が利かない、自分勝手ってとこかな?オイ馬鹿野郎!な訳あるか!大胆で壮大な宇宙だろ!」

全員笑いころげた。

「なによ!なんで笑うの?どこが、どこが可笑しいのよ?」

「マリ、自分でなに言ってるか分かってるの?」同級生の美智子だった。

「な~にが?なんで?」

「諸君、これが悪い見本だからね」

「は~い」全員、声を揃えた。

マリは思った「いつか必ず、こいつら力一杯しごいてやる!」
 
顧問の花岡先生が「みんないいか、そろそろ全国競書大会に出品する作品を何にするか考えておくように」

「花岡先生、ちょっとよろしいですか?」

「おう、 泉谷どうした?」

「全国競書大会の件なんですけど。入部した時にマリ先輩が『この書道部は書を楽しむところ。書を争うところではない。そういう大会は出ないから、出たい人は自分で申込みなっ!』って言ってたんですけど?」
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