そのままの君が好き〜その恋の行方〜
沈黙が私達を包む。私の顔を信じられないと言うような表情で見つめていた沖田くんは、やがて穏やかな笑顔を浮かべると、口を開いた。


「君の気持ちは、素直に嬉しいよ。ありがとう。だけど・・・恋愛は身の丈に合った人と。そう決めてるから。ゴメン。」


そう言って、今度は沖田くんが、私に頭を下げると、背を向けて、歩いて行ってしまった。


(沖田くん。それ、どういう意味・・・?)


私は言葉もなく、彼の後ろ姿を見送った。


私が部屋に戻って来ないのを心配して、部屋から出て来た由夏に、沖田くんの言葉を伝えると、由夏も言葉を失った。


「ゴメン。私、帰るね。みんなによろしく。」


「加奈。」


子供じみてることは、わかってるけど、沖田くんの顔を、もう1度見る気がしなくて、私は由夏にそう言って、建物を後にした。


駅に向かって、歩を進めながら、私は沖田くんの言葉を反芻していた。


(私がキャリア官僚になるから、自分では釣り合わないってこと・・・?)


沖田くんが言いたかったのは、そう言うこと・・・としか解釈出来ない。


沖田くんは確かに、家柄の違い・・・とはちょっと違うかもしれないけど、住む世界が違うと言われて、彼女に振られた。彼の心の傷の深さを思い知らされる。


でも、私と唯さんは違う。キャリア官僚だから何?そんな違う人種みたいに見て欲しくなかった。


スペックの高い女だから、俺には縁もないし、用もない。あの誠実な沖田くんに、そんなふうに思って欲しくなかった。ショックだった。


こんな振られ方するなら、顔や性格が気に食わない、とでも言われた方が、よっぽどマシだったよ・・・。


連敗続きだった大学生活での、私の恋愛。最後も最悪の形で終わってしまった・・・。
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