そのままの君が好き〜その恋の行方〜
沖田くんは、トイレタイムではなく、どこかに連絡しなければ、ならなかったようで、携帯で少し誰かと話をしていたけど、それが終わると部屋には戻らず、近くのソファにポスンと腰を下ろした。それを見た私は、勇気を出して、彼に近づいた。


「沖田くん。」


私が声を掛けると、沖田くんは一瞬、驚いたような表情になったけど、すぐに笑顔を向けてくれる。


「横、いい?」


「もちろん。」


その答えを聞いた私は、ちょっと遠慮がちに、彼と少し隙間を開けて、横に座った。


「卒業以来だね。」


「うん。」


「元気にしてた?」


「お蔭さまで。沖田くんは?」


「まぁ、なんとかね。」


そう答えた沖田くんの表情が、少し曇ったのを、私は見逃さかなった。


「誰と話してたの?」


「見てたのか、白鳥さん。」


「えっ、先輩?」


「うん。水木さんが急遽、欠席になっちゃったから、代わりにゴーさんやみんなにメッセージを頼むって。水木さん、どうしたんだろう?久しぶりに会いたかったのに、心配だな。」


「なんか、寒気と吐き気がするからって。風邪だろうとは思うけど。本人は来るつもりだったみたいだけど、みんな大事な時期なんだから、移したら申し訳ないからって、お母さんに止められたみたい。」


「そっか。お大事にって伝えてよ。」


「うん、わかった。」


そこで一瞬の沈黙。私はすぐにまた話し掛ける。


「相変わらず、先輩に使われてるんだね。」


「まぁ、野球部は縦社会だから、先輩は絶対だよ。」


そう言って、彼は笑ったけど


「でも、最近先輩、やたら僕に気を遣ってくれて。よく電話もくれるんだ。なんか申し訳なくなる。」


と、少し複雑そうな表情で呟いた。その意味がわかった私は、ハッとして沖田くんを見てしまう。


「ごめん。なんか変なこと、言っちゃったな。気にしないで。さ、部屋戻ろうよ。」


慌てたように立ち上がる沖田くんに


「沖田くん!」


と私は思わず呼び掛けていた。


「好きです。」


唐突にこんなことを言い出した私に、沖田くんは驚きの表情を向ける。


あまりにも不自然な流れの告白で、私も内心しまったと思ってるけど、こういうシチュエーションに慣れてる訳でなし。それにさっきの沖田くんの一瞬見せた切なそう表情に、思わず口走ってしまった。もう行くしか、ない。


「あなたのことが、高校の時から、ずっと好きでした。私じゃ、唯さんの代わりには不足かもしれないけど、でももし私でよかったら・・・お付き合いして下さい。」


そう言って、私は頭を下げた。
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