私たちの六年目
「崎田君」


私を呼んだのは、この春入社したばかりの新人、崎田(さきた)春斗(はると)君だった。


崎田君は駆け足で私に追い付くと、横並びに歩き始めた。


「崎田君、みんなとご飯に行かなかったの?」


崎田君は女子社員にものすごく人気があるから、キミが来ないとみんなつまらないんじゃないかな。


「そう言う菜穂先輩だって、行ってないじゃないですか」


「昨日帰りが遅くなって寝不足なのよ。今日はゆっくり眠りたいからさ」


「昨日は金曜ですよね。例の大学時代のご友人と飲み会ですか?」


「そう」


「毎週やってるんですよね? 仲良いですよね」


「そうだね。もう五年以上の付き合いになるかなあ」


我ながら、よく続いてるなとは思うけど。


「僕がどんなにお願いしても、全然飲みに連れて行ってくれないのに、大学時代の友達とは頻繁に会うんですね」


「えー、だって崎田君とは会社のみんなと飲みに行く時に一緒なんだし、改めて他で飲む必要ないじゃない」


大体崎田君みたいなお洒落な男の子が、どんな店を好むのかなんて、私にはさっぱりわからないし。


同期の女の子とか、アキを誘えばいいのに。


「わかってないですね、菜穂さん」


「はい?」


どういうこと?


私が何をわかってないって?


「僕、菜穂さんのことが気になってるんですけど」
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