恋の宝石ずっと輝かせて2
「あれ? ここにあった石はどうしたの?」

「あれは僕が責任もって預かっておくよ。ユキが触るとトイラの力が増してユキに悪い影響を与えそうだから」

「もしかして、今トイラが出てきて何か喋ったの?」

「うん、ちょっとね。トイラはどう思ってるか聞いてみたかったんだ。やっぱりトイラも石のことは暫く様子見た方がいいって意見だった」

「そっか。とにかく、石のことは黙っておくことにして、今はカジビを探さないと。そのためにはまたキイトとセキ爺に連絡しなくっちゃ。何かわかったかもしれないし。後でキイトを探しに神社に行こうか」

「そうだね」

 目まぐるしく事が起こり、ユキは仁と気まずい言い合いをしたことをすっかり忘れていた。

 それどころかユキは時折り、希望を持った生き生きとした表情でにこやかに笑っている。

 あの時の意見の食い違いをぶり返すことなど仁もしたくなかったが、それにしてもなかったことにされるのも虚しい。

 ユキが笑顔でいるその背景にトイラとの逢瀬が強く影響しているに違いない。

 意識同士が触れ合った。それが何を意味するのか――。
 仁はその後を考えたくなかった。

 仁は突然湧き上がる嫉妬に当惑する。
 どこにもぶつけられない切ない思いは仁の心でくすぶる。

「はい、お待たせ。温かいうちに早く食べて」

 温かい湯気が漂うご飯の入った茶碗をユキから差し出されて、仁はそっとそれを受け取った。

「おいしそうだね。それじゃいただきます」

 ユキが自分のために作ってくれた食事。
 
 口に頬張り、しっかりと噛んで咀嚼した。
 先ほど抱いた嫉妬も飲み込むように。

 仁は自分がどうすべきなのかすでに覚悟はできていた。
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