恋の宝石ずっと輝かせて2
「だからこそ最高に輝いて美しいんだと思う。その瞬間がかけがえのない大切なもののように、精一杯の力を出し切っている。それが一瞬で終わろうとも、強烈に忘れられないものを心に植え付ける。まるであの人が残したもののように……」

 敢えて名前を出さなくともユキの言いたいことが仁にはよく分かっていた。

 打ち上げられる花火を見ながら、ふたりは同時にトイラのことを思っていた。

 ふたりが一緒にトイラを思う。

 そしてお互い納得して笑顔で見つめ合った。

 そこにはかけがえのない、大切な絆がしっかりと絡み合うように、またこの先も忘れないと言い聞かせるように、ユキと仁は何もかも受け入れた上でお互いの事を見つめている。

 再び次の花火が勢いよく上がると、二人はしっかりと手を握り寄り添って夜空を仰いでいた。

 花火は一層艶やかに美しく、豪快に夜空を彩りよく賑わせていた。

 暫く黙って花火を観賞する。

 その時、ここ一番大きな花火が空高く上がった。

 そして見事な緑色と赤色が交わる大輪の花を咲かせていた。

 儚く散った時、ユキの目頭が熱くなる。ぐっとこみ上げる思いに仁の手を強く握ってしまう。

 仁もまたユキの思いをしっかりと受け止め、力をこめてユキの手を握る。

 ユキと仁の絆が結ばれる――。

 ユキは仁に振り返って、微笑んだ。

「この山のどこかで赤い石がきっと赤く反応しているね」

「ああ、そうだね」

 また花火が上がる。

 ふたりの表情は花火の光に照らされてどこか洗練され大人びて見えていた。

 それが寂しくもあり、嬉しくもある。

 これからどんな大人になるのだろうか。

 それでも心に抱いた輝かしい思い出はいつまでも心にしまっておきたい。

 恋したことも忘れない。

 それは宝石のようにいつも自分の胸でキラキラと煌いている。

 それがあるから自分は強くなれる。

 恋をしてよかった。あなたに会えてよかった。

 ユキも仁も大切な事を教えてくれたトイラに感謝していた――。
 
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