恋の宝石ずっと輝かせて2
「おーい、ユキ」

「ママーまって! パパとみどりをおいて、さきにいくなんてじゅるい」

 舌足らずに喋る小さな女の子を抱えながら、少し運動不足気味の父親がはあはあと息をつかせて走ってきた。

「おいおい、僕はもう年なんだから、走らせるのはやめてくれ。あー苦しい」

「何を言ってるの仁。私たちまだまだ若いでしょ。年とかそういうの言わないでよ」

「ごめん、ごめん」

 仁はへらへらしながら、抱いていた緑を下ろした。

「パパをいじめちゃダメです」

 眉間に皺をよせ、困った顔つきの緑は手を広げて仁を庇う。

「緑はパパの事が大好きだもんね」

 ユキは柔らかな娘の頬を軽くつついた。

「みどりは、パパもママも大すき。そして黒ねこのトイラも大すき。ちゃんと良子おばちゃまと、なかよくおるすばんしてるかな」

 大げさに手を振って好きと気持ちを表現したあと、すぐに心配そうな表情で首を傾げる我が子がかわいい。
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